27日、東京競馬場で行われた
日本ダービー(3歳牡牝、GI・芝2400m)は、
四位洋文騎手騎乗の3番人気
ウオッカ(牝3、栗東・角居勝彦厩舎)が、中団の内から残り200mあたりで先頭に立つと、逃げた14番人気
アサクサキングスに3馬身差をつけて快勝。43年のクリフジ以来64年ぶりとなる牝馬による
ダービー制覇の偉業を果たした。勝ちタイムは2分24秒5(良)。さらに1.3/4馬身差の3着には4番人気
アドマイヤオーラが入り、圧倒的1番人気(単勝1.6倍)の
フサイチホウオーは中団から伸びを欠き7着、皐月賞馬で2番人気のヴィクトリーは後方からの競馬で9着に敗れた。
勝った
ウオッカは父
タニノギムレット、母はJRA5勝のタニノシスター(その父ルション)という血統。叔父に今年のガーネットS(GIII)を勝ったスリーアベニュー(牡5、栗東・小野幸治厩舎)がいる。
昨年10月のデビュー戦(京都・芝1600m)で2着に3.1/2馬身差をつけ逃げ切り勝ち。続く黄菊賞(500万下)は2着だったが、3戦目の阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)を2歳日本レコード(1分33秒1)で制し、昨年のJRA賞最優秀2歳牝馬を受賞した。今年はエルフィンS(OP)から始動し3馬身差で快勝。続くチューリップ賞(GIII)も制して臨んだ前走の桜花賞(GI)では単勝1.4倍の圧倒的1番人気ながら、ダイワスカーレットの2着に敗れていた。通算成績7戦5勝(うち重賞3勝)。
東京優駿全着順
1
ウオッカ 2:24.5
2
アサクサキングス 3
3
アドマイヤオーラ 1.3/4
4 サンツェッペリン クビ
5 ドリームジャーニー 3/4
6 ゴールデンダリア クビ
7
フサイチホウオー クビ
8 ナムラマース クビ
9 ヴィクトリー 1.1/4
10 フライングアップル ハナ
11 タスカータソルテ アタマ
12 マイネルフォーグ 1.1/4
13 ローレルゲレイロ クビ
14 トーセンマーチ ハナ
15 フィニステール クビ
16 ヒラボクロイヤル ハナ
17 ゴールドアグリ ハナ
18 プラテアード 6
東京優駿コメント
1着 3番
ウオッカ(
四位洋文騎手)
「4コーナーを周るときの手応えが良く、これはいい勝負をすると思いました。直線で抜け出してからは、やはり
ダービーですから、最後まで必死でした。
ダービーへの挑戦は特に驚きませんでしたよ。可能性を秘めている馬ですから、いいチャレンジだと思っていました。牝馬なのでやはりナーバス。少しイレ込んでいたので、道中いかにリラックスさせるかを考えていました。内枠ということもあり、内めをロスなく周って最後は外へ、というレースプランもその通りになって良かったです。自分自身、この馬が牝馬であるという意識を持たずにいたので、他の牡馬は気になりませんでした。
ダービージョッキーは最高です。もう辞めてもいいぐらいです(笑)。今後は海外へというプランもありますし、世界に目を向けて
ウオッカと一緒に頑張りたいです」
2着 16番
アサクサキングス(福永祐一騎手)
「レース前に考えていた作戦のうちの、一番いいパターンが出せました。気分良く走らせようと思っていました。3コーナーで少し仕掛けたらスッと反応できましたし、4~5番手グループが動かなかったのも大きかったですね。切れる脚はなくても、跳びが大きい馬なので、自分のペースで走れば2400mでもやってくれると思っていました」
(大久保龍志調教師)
「一瞬やったと思いました。でもあそこから差し切るんだから、
ウオッカは強いですね。2400mは未知数でしたが、自分のペースで行ければこれだけ粘れるんですね。この後は無事なら宝塚記念へ向かうことを考えています。あぁ、最後は思い切り力が入ったなぁ。勝ったと思ったけど、甘くはなかったか」
3着 14番
アドマイヤオーラ(岩田康誠騎手)
「ゴール前で1頭になったらフラフラした。道中中団で流れに乗れて、この馬なりに直線も伸びているが、馬場の内外の差。まぁ、距離は大丈夫です。惜しかったです」
4着 12番サンツェッペリン(松岡正海騎手)
「夢を見ました。力は出し切ったし、自分の競馬はできました。この結果には満足です」
5着 8番ドリームジャーニー(蛯名正義騎手)
「自分の馬の競馬をして、終いも脚を使っています。中途半端に動かして脚をなくすより、この馬の競馬を心掛けました。最後は内にモタれてしまいました」
6着 4番ゴールデンダリア(柴田善臣騎手)
「ソエもなく、返し馬の感じも良く、体も増えていたよね。距離が問題ではないと思うが、やはりここまで連続で使ってきた疲れかな。帰ってくるときはこれまでになく情けない格好だったからね」
7着 15番
フサイチホウオー(安藤勝己騎手)
「イレ込みもあったが、道中少しかかった。今日の馬場は先に行った方が有利だと思ったが、追ってから伸びない。今日は右で叩いたぐらいだから。4コーナーで追い出したが、あまり反応しなかった」
(松田国英調教師)
(先週のオークスでダイワスカーレットが熱発回避と)2週連続で失敗してしまった。向正面で掛かったのは痛かった。ファンには申し訳なかった。
8着 11番ナムラマース(藤岡佑介騎手)
「返し馬の感じは今までで一番良かった。ゲートは出たが、1コーナーで2頭に被されて、下げざるを得なかった。やはり中団で運びたかった。流れが予想以上に落ち着いてしまった。馬にかわいそうなことをしました」
9着 17番ヴィクトリー(田中勝春騎手)
「まさかゲートを出ないとは思わなかったよ。2コーナーで脚を使ったぶん折り合いに注意して行ったが、直線に向いたら手応えはなかった」
11着 1番タスカータソルテ(武豊騎手)
「いい感じで直線を向くまで行ったが、この馬には馬場が硬い感じがする」
14着 5番トーセンマーチ(内田博幸騎手)
「スタートは良く、外から来られたので4~5番手に下げて競馬をしました。キャリアも浅いので、使っていけばいい競馬ができると思います」
16着 9番ヒラボクロイヤル(大久保龍志調教師)
「気性がまだ少し幼いですね。青葉賞は激しいレースで、馬もやる気を出していたのですが、今日は落ち着いた流れになってしまい、馬に燃えるところがありませんでした。最後は自分から走るのをやめてしまいました」
17着 2番ゴールドアグリ(勝浦正樹騎手)
「思っていた感じの通りに乗れました。直線は一瞬だけ伸びかけたけど、そこで止まってしまいました。まだ経験の少ない馬なので、これからキャリアを重ねれば大舞台でも走れるようになりますよ」
日本ダービー・アラカルト
●
四位洋文騎手
11回目の騎乗にして
日本ダービー初制覇。05年シックスセンス、06年ドリームパスポートと、ここ2年連続3着だった。JRA・GIはウオッカで制した昨年の阪神ジュベナイルフィリーズ以来の通算9勝目。クラシックレースは96年皐月賞(イシノサンデー)以来の2勝目。JRA重賞はウオッカで制した今年のチューリップ賞(GIII)に続く今年3勝目、通算50勝目。
●角居勝彦調教師
日本ダービーは初出走初制覇。JRA・GIはウオッカで制した昨年の阪神ジュベナイルフィリーズ以来の通算7勝目。クラシックレースは04年菊花賞(デルタブルース)、05年オークス(シーザリオ)に続く3勝目。JRA重賞はウオッカで制した今年のチューリップ賞(GIII)に続く今年4勝目、通算19勝目。
●牝馬の優勝
37年のヒサトモ、43年のクリフジに続く史上3頭目、64年ぶりの快挙。出走も96年のビワハイジ(13着)以来11年ぶりだった。
●史上初の父娘制覇
ウオッカの父
タニノギムレットは02年の
日本ダービー馬。父娘制覇は史上初。父仔制覇はカブトヤマ(33年)&マツミドリ(47年)、ミナミホマレ(42年)&ゴールデンウエーブ(54年)、ミナミホマレ(42年)&ダイゴホマレ(58年)、シンボリルドルフ(84年)&トウカイテイオー(91年)に続き5組目。
●父内国産馬の勝利
91年トウカイテイオー(父シンボリルドルフ)以来16年ぶり。
●馬主・谷水雄三氏
ウオッカの父である
タニノギムレットで制した02年以来の
日本ダービー2勝目。同氏の父・谷水信夫氏は68年タニノハローモア、70年タニノムーティエで日本ダービーを2勝している。
●生産者・カントリー牧場
68年タニノハローモア、70年タニノムーティエ、02年
タニノギムレットに続く日本ダービー4勝目。
●勝ちタイム
2分24秒5(良)は、04年キングカメハメハ、05年ディープインパクトの2分23秒3(いずれも良)に次ぐ3番目の好タイム。2分25秒を切る勝ちタイムも上記に次ぐ3回目。
●1番人気馬
フサイチホウオーが7着に敗れ、01年ジャングルポケットから06年メイショウサムソンまで6年続いていた1番人気の優勝がストップした。1番人気馬が連対を外したのは97年3着のメジロブライト(勝ち馬サニーブライアン)以来10年ぶり。
●関西馬の優勝
98年スペシャルウィークから10年連続。
●オンナの世代
NHKマイルCはピンクカメオが優勝。日本ダービーもウオッカが制し、同世代の牡馬を圧倒している。
安倍晋三内閣総理大臣の談話
「東京競馬場の美しさ(エントランスが美術館のようで)には本当に驚きました。競馬はテレビでしか見たことがないのですが、ライブで見ると迫力があって気分が高揚しました。馬券は、家内がウオッカを単勝で買っており、私も家内に倣って複勝で買いました。『競馬は人生の縮図であり、これほど内容の詰まった小説は他に、ない』というヘミングウェイの言葉があるそうですが、最後まで頑張ったものが勝つのだと思いました。表彰式で、勝った
四位騎手には、素晴らしいレースをありがとう、と声を掛けました。イギリスのチャーチルが『一国の宰相になるより、ダービーのオーナーになるほうが難しい』と言っていますが、まさに関係者の皆様の努力が報われたことを称えたいと思います。馬には子供の頃、遊園地で子馬に乗ったことがある程度です。サラブレッドは、色・つや・形がとても素晴らしく、美しさに感動しました。(現役の総理大臣としては)私の祖父である岸信介・小泉元首相に次ぐ3人目の来場でしたが、歴史的なダービーをライブで見ることが出来て感激しました。機会があったら、また競馬場に足を運びたいと思います」