「
出会いカフェ」とか「
出会い喫茶」という名前のお店が登場し、人気を呼んでいるらしい。もちろん、男性と女性が出会うための場だが、ここで知り合った女性を、酔わせてホテルに連れ込んだ末の犯罪も起きている。いったいどんなお店なのだろう。実際にいってみた。
ラブホテルに連れ込んだ上、「昏睡強盗」働く
2007年春、東京・池袋の
出会いカフェで知り合った20歳の女性に対し、男性小学校教諭(45)が、ラブホテルに連れ込んだ上昏睡強盗を働いた疑いで逮捕された。新聞各紙の報道によると、教諭は
出会いカフェで知りあった女性を近くの居酒屋に誘った。最終的にラブホテルで現金1万円とブランドものの財布などが入ったバッグ(計約6万円相当)を昏睡状態にさせた女性から奪った疑い。女性は、居酒屋で薬のようなものを入れられたといい、教諭は、合意の上でホテルに行ったなどと話し、二人の説明は食い違っている。
この事件で、「
出会いカフェ」が注目されることになった。今どれくらいの店があるのだろうか。ある「
出会いカフェの専門サイト」を見ると、全国各地のエリアに分かれ、中国・四国と九州・沖縄は空欄。大阪を見ると9カ所登録があった。東北は3カ所。東京が最も登録数が多い。池袋7カ所や新宿4カ所、渋谷4カ所などと細かいエリアに分かれている。ほかにも似たような「専門サイト」があり、相当な数の「
出会いカフェ」が首都圏などで営業されていることが分かる。もっとも、風俗関係店と比べるとまだまだ少ないようだ。
お店のHPを見てみる。男性用情報と女性用情報があるところが多い。男性用をクリックすると、入会金と入場料、フリートーク料、店外同伴外出料などを払うシステムを説明してある。値段は店によりまちまちだ。女性の胸元のアップ写真を載せる店もある。
女性用をクリックすると、「無料のマンガ喫茶」という位置付けで「素敵な出会いがあるかも」とうたう。「給与、交通費いくら」という表記はない。別の女性求人サイトの「出会いカフェ」欄を見ても「無料でマンガ喫茶を利用できる」という紹介だけで、「キャバクラ」などほかの欄のような給与・交通費の説明はない。
「ここ1,2年の新しい店だね」
「無料のマンガ喫茶」みたいなもの、というのは本当なのだろうか。「出会いカフェ」を探しに、新宿・
歌舞伎町へ出かけてみた。ある土曜日の夕方。無料風俗案内店に入って、「出会いカフェって何」と質問すると、案内店の男性は「ここ1,2年で出てきた新しい店だね」。
男性客が気に入った女性客に店員を通じてフリートークを申し込むと、女性は基本的に100%応じるシステム。ここが従来からある「お見合いパブ」との違いだ、と説明を受けた。パブでは拒否される場合も多いそうだ。フリートークで店外デートを交渉する。成立するかどうかは「お客さんのトーク力次第」だそうだ。
で、近くの出会いカフェを紹介してもらう。するとカフェから「お迎え」が来た。
夕方5時ごろ。新宿
歌舞伎町の無料案内所で紹介され、店から迎えに来た店員と、ビルの地下にある「出会いカフェ」に入る。店の入り口には「5000円」と書かれたピンクの看板が立っているだけだが、なかには「人間水族館」のような光景が広がっている。というのも、男性と女性の席の列は向き合っているが、間はマジックミラーでしきられており、男性側からだけ女性を見ることができる、というつくりになっているのだ。男性側は5席前後、女性側は10席前後。なかは薄暗く、男性はタバコを吸うなどしながら女性たちを眺める。女性席の上の壁には、1から番号がふってある。女性客は最初1人、でほどなく5人に増えた。
出会いカフェに実際に行ってみると、「
ギャル」風は少なく、客のほとんどは、「フツー」に見える女性だった。来店の理由の多くは「暇つぶし」プラス「お小遣い稼ぎ」というのだが、それだけではないような雰囲気も漂ったりして・・・。
「単なるお小遣い稼ぎ」から「売春」まがいまで、さまざまな交渉が店という「場」で女性と話し始めたときから始まる。
5000円くらいの「交通費」が目当て?
女性の年齢や職業、希望のデートコースチェック欄(カラオケ、お酒、喫茶店、その他)などが書かれたプロフィール用紙が女性入室の度に、席の番号に応じて分るよう男性席の壁のフォルダーにはさみこまれる。男性客は、新しい女性が入ってくるたびに目を凝らして吟味している様子だ。金髪で肌の色が黒い「
ギャル」風の女性は予想以上に少なく、黒髪でカーディガンを羽織ったいかにも「お嬢様」風の女の子も入ってくる。
「交通費としていくらあげられる?」などの欄がある「トーク申込書」を記入して店員に渡し、女性の番号を告げる。別室に移動して2人で話す。すぐに「お寿司でも」ということになり、外出する。店を出たところで、申込書に書いた交通費10,000円を店からもらった封筒に入れて女性に渡す。店員によれば「交通費」は5,000円以上にすると、「外出」の可能性が高くなるようだ。
記者が「出会った」女性は自称26歳のまじめそうな女の子だ。モノトーンの服装で地味な印象。化粧も薄く、いかにもおとなしそうな人だ。都内のIT系企業で働いているが、福祉関係への転職を目指し平日の夜は専門学校へ通っているという。
「カフェへは土日にたまに1人で行く」。女性が「出会いカフェ」に入るのは無料。しかも、飲み物から菓子やマンガを無料で楽しめ、「暇つぶし」に良いそうだ。
エッチ目的の男性客が多いのでは、と聞くと「そういう人は最初のトークですぐ分かる。ひいちゃう」。
フリートークで気が合えば食事をおごってもらい、交通費「5,000円くらい」を客からもらう。危険を感じたことは「特にない」。女性側にも援助交際目当ての人がいるのでは、という質問には「そんな感じの子はいるけど話さないから分からない」とのことだった。
盛り上がれば
エッチもありなのか。これは、さすがに「ええ、どうでしょう」とかわされた。カフェを出て約2時間半、女性は「この辺で」と切り上げた。結局、女性の食事代約4,000円を含め計19,000円を支払った。
今度は、新宿
歌舞伎町の雑居ビルに入った別の出会いカフェに入る。入会金と入室料(一時間)は8000円ほど。こちらでは、個室に男性が入り、女性が次々とそこを訪れるというシステムになっている。3畳ほどの部屋にはパソコンが置いてあるほかは、自分と訪問する女性が座るソファが置いてあるだけだ。
こちらの「出会いカフェ」では、男性が書いた「好みのタイプ」などを参考に、女性は各部屋に割り振られる。外出が成立すれば、「お小遣い」と称して金がもらえるという仕組みだ。話す時間に制限は無く、女性との話が済めば、次の女性が部屋を訪れてくる。
店員は「やっぱり
セックスっすか?」
最初に部屋に入ってきた女性に「外出できればいい、と思って来た」と告げると、「私外出しないから、他の人に代わるね」といって部屋を出て行った。また、他の女性も「お菓子を食べに来た」と話す。「外出」を目的とせず、単に「暇だから来た」という女性も多いようだ。
「マジックミラーの店と違って、ここって
エロい人が多い」――ある女の子はこのように語る。彼女は、先ほど記者が行ったマジックミラーの店とこの店の両方に、ちょくちょく顔を出しているようだ。しかし、「援助交際」や「売春」が目的ではない様子だ。
この店では、個室で2人きりになるため、体を触られたり、最初から「ホテルに行こう」と誘う男性もいるようだ。個室には鍵も付いており、完全な密室状態になる。しかし、意外なことに女性たちは恐怖感のようなものを持っていない。
「凄い嫌な顔をして、触ったらそれでいくらとかお金を要求する。おじさんとかだと、『それでもいい』とか言ってくる人がいて困ったけど」
別の女の子は、出会いカフェが発端で発生した昏睡強盗事件の話をすると、驚いた様子で「気をつけなきゃね」と話した。
早朝の4時。最初のマジックミラーの店に再び入る。しかし、夜の出会いカフェに比べて、女性はまだ減らない。記者が女性たちを眺めていると店員が話しかけてくる。「今日は何すか?」。記者が「えーっと」ともごもごしていると、店員は「やっぱり
セックスっすか?」と言ってきた。
店員は、「トーク申し込み書」の金額欄を「それ以上」(つまり10,000円以上)にチェックするよう指南する。
「●番だったら、それ狙いなんで絶対いけますよ!」
●番の女の子は、化粧もそれなりにしていて、カジュアルなワンピースとハイソックスを身につけた「今風」の女の子。
店は援助交際を禁止していると説明するのだが、これは建前で、「本音」は違うようだ。
「暇つぶし」の女性が集う「出会いカフェ」。もちろんなかには、援助交際を目的にしている女の子もいるようで、そのことを店も十分に承知している。