演技ができないモデルが出演するドラマや、聞いたこともないアーティストが「話題沸騰中」と紹介される歌番組、笑えない芸人がハシャギまくるバラエティ……観せられる側が興ざめするキャスティングの_謎_を徹底解剖。
テレビ局は、どういう基準でタレントをキャスティングするのだろうか?
「番組ごとに、事情がありますからね(笑)。よくいわれるのがメインタレントとのバーターですが、番組提供スポンサーとのカラミ、あるいは番組プロデューサーなどとの個人的な関係まで、多種多様です」(テレビ局関係者)
タレントの人気、実力以上にこういった要素が影響してくるため、「なぜこのタレントが、この番組に?」という事態が起こってしまう。わかりやすいのがドラマのキャスティングだが、情報系も含めたバラエティ番組でも、これは同様である。
最も多いバーターは、
島田紳助や
ダウンタウンなど、大物芸人から有象無象のひな壇芸人までを山ほど抱える吉本興業系の番組。『
ダウンタウンDX』(日テレ)で大物俳優やミュージシャンに交じり若手吉本芸人がキャスティングされたりするのも、大手ゆえの強みである。ただし、こうしたケースはコメディ・リリーフとして扱いやすく、スケジュールの融通が利くという利点もあるのだが、ケイダッシュが猛プッシュしている
押切もえの番組『オモ★さん』(テレ朝)などを見ると、フリーになったばかりの
川田亜子をはじめ、系列であるパール所属のタレントばかりという露骨なケースも目立つ。
「ケイダッシュ系のゴリ押しは有名で、『ものまねバトル』(日テレ)でも原口あきまさやはなわ、前田健の抱き合わせで、所属タレントをねじ込むことが多い」(前出・関係者)
ワタナベエンターテインメントも抱き合わせが目立ち、『ラジかるッ』(日テレ)の司会が中山秀征になったことで同事務所のレッド吉田、原千晶、にしおかすみこが抜擢されており、恵俊彰の『2時っチャオ!』(TBS)にもゴルゴ松本や松本明子が出演中だ。
もちろんこの構造は、今に始まった話ではない。かつて、ナベプロが_帝国_と呼ばれた時代には、所属タレントのクレージーキャッツやザ・ドリフターズといった人気グループの冠番組から、ザ・ピーナッツやキャンディーズなどのアイドルが生まれ、沢田研二らが歌番組を席捲していた。そんなナベプロ帝国を支えたシステムのひとつが、所属タレントのマネジメントだけでなく、企画・制作段階から番組制作に深くかかわるという手法。たとえば『新春かくし芸大会』(フジ)や『8時だヨ!全員集合』(TBS)の制作権まで握っており、これならキャスティングは、自由にし放題になる。
「この70年代後半から老舗の大手芸能プロが制作部門を持つようになりました。制作会社の孫受けとして機能しているケースもありますし、現在はCSで専門チャンネルを持って自社製作番組を放送している、吉本のようなケースも出てきている」(制作会社社員)
現在は番組の
DVD化やゲーム化などの権利関係も絡んでくるため、冠番組の多くには「制作協力」「協力」のクレジットで事務所が名前を連ねるケースも多い。
事務所にとっては、キャスティング権を持つ、局の実力者たちとのパイプ作りも欠かせない。ナベプロの影響力が低下した80~90年代にかけて台頭してきたバーニングプロが、上層部から現場レベルまで接待漬けなどで囲い込み、実質的なキャスティング権を獲得していったのは有名な話。『ワンダフル』(TBS)の塩川和則など、すでにクビになったプロデューサーは典型的なバーニング御用Pだが、それは氷山の一角だという。
「バーニング系列の制作会社プロシードあたりがキャスティング権を持って、それぞれの番組にも細かく事務所枠が設定されていたりしますからね。わかりやすいのが『笑っていいとも!』(フジ)で、大手から中小まで、事務所同士のバランスが絶妙です。最近、南野陽子がレギュラーに起用されたけど、あれもケイダッシュ枠」(放送作家)
■芸能事務所が持つ各局の“事務所枠”
一方、
ジャニーズ事務所を見ると、こちらは完全な売り手市場。特に視聴率で後れを取っていたテレ朝などは、
ジャニーズタレントの確保に、なりふり構わぬ動きを見せている。
「デビュー前のJr.ですら『裸の少年』『8時だJ』を持っている。7月から始まる
堂本光一のドラマ『スシ王子!』も、放送前から映画化まで用意する厚遇ぶりですよ(笑)」(民放関係者)
ヱヴァンゲリヲン UCC COFFEE ミルク&コーヒー EVA07 また
SMAPが台頭した頃から、日テレの土曜21時(『
喰いタン2』)や、TBS金曜22時(『
特急田中3号』)のように
ジャニーズが押さえたも同然の番組枠も多い。局側にしてみれば、スポンサーのOKさえ得られれば、内容は二の次でとにかく出てもらうことが最優先。そのため、結局
ジャニーズ側の意向が優先されてしまう。これは視聴率が取れるというだけではなく、他番組への人気ジャニタレの出演という、バーターの側面も強い。
現在はスターダストや研音、オスカーなどの事務所も同様の手法を採るようになっており、テレビ局と事務所側の力関係は完全に逆転しているようだ。もっとも、こうした状況も事務所側にしてみれば自社の商品であるタレントを売るための企業努力。問題はタレント人気に頼りきった番組作りしかできなくなっている局側にありそうだ。
『エンタの神様』(日テレ)が、売れない芸人を徹底的にキャラ付けして売り出す手法で批判を集めたが、これなどはまだマシな部類。『めちゃ×2イケてるッ!』や『はねるのトびら』(共にフジ)といった、局側がタレントを育てるための番組はどんどん減っており、目先のスポンサーを獲得するためのキャスティングが優先されているのが現状だ。
「歌番組だって、自局番組の主題歌とのカラミなど制約は山ほどあるし、報道・情報番組でも同じ局の番宣がらみでゲストをハメ込むのはよくあることだからね」(放送作家)
商売優先のテレビ局の姿勢が、ツマラない番組を量産している元凶のようである。
ソース:
サイゾー