●西武・巨人戦は4.6%
「大健闘? いや、場外ホームランでしょ」
某民放局のディレクター氏が興奮を隠せない。
早大の
斎藤佑樹が先発した3日の早慶戦。早大が2季連続39度目の優勝を決めたこの試合が、関係者の予想を上回る9.9%(ビデオリサーチ調べ=関東地区、以下数字は同)という高視聴率を記録したのだ。
「日曜日とはいえ、午後2時からの番組で2ケタに近い数字が出るのは、異常と言っていい。中継した
NHK教育の視聴率は、この時間帯なら普通は1%にも満たない。それが、巨人戦にダブルスコア以上。1時間遅れで始まった日本テレビの
斎藤特番も4.4%を記録して、
斎藤人気の高さを証明した。落ち目の野球界にとってはまさに、救世主ですよ」(前出の民放局ディレクター)
前週の午後2時に
NHK教育が放送した「こころの時代」の視聴率は0.2%。そのざっと50倍の数字を叩き出した
斎藤の人気は、巨人戦も完全にのみ込んだ。
3日の同時刻にテレビ朝日が生中継した、西武―巨人の交流戦の視聴率はわずか4.6%。原監督に
小笠原、
高橋由、
二岡、
阿部らが束になってかかっても、この大学生を土俵際に追い詰めることすらできなかったわけである。
●
DVDに特番、独占取材
当日は神宮球場も3万6000人の大入り札止め。東京六大学の試合では10年ぶりの満員だった。大観衆で埋め尽くされたそのスタンドを見て、周囲はにわかに色めき立った。
「まず、テレビ局です。昨年12月に六大学野球連盟から5年契約で放映権を獲得した日本テレビは映像使用権をフル活用して、早くも早大をメーンにした
DVDの発売を内定。後れを取る他局も6月の全日本大学選手権、7月の日米大学野球、9月の秋季リーグ戦の前にさまざまな特番企画を検討している。その裏では各局が独占インタビューを取ろうと、
斎藤の囲い込みに躍起になっている」
とは、アマチュア野球担当記者。金の卵を我が手にとばかりに、「本人や両親はもちろん、早大の応武監督らの接待攻勢も始まるでしょうね」というのだ。
●飲ませ食わせ下の処理も
さらに、4年後の卒業とその後のプロ入りに向け、複数のマネジメント会社や芸能事務所も水面下で動きを活発化。あの手この手で
斎藤に接触を図ろうと、あらゆるコネを使って周辺をウロつき始めている。
「彼らにはアマの野球憲章もプロアマの規定も関係ない。3年前に大学からプロ入りした某選手には、高校時代からあるマネジメント会社が暗躍。親を巻き込んで飲ませ食わせでズブズブにした揚げ句、その選手の下の面倒まで見ていた。プロ入り後のその選手はすっかりテングになって、実績より生意気で有名です」(アマ野球関係者)
倫理行動宣言後もアマ選手に裏金を払い、各球団で申し合わせた額をはるかに超える契約金を出していたプロだって、この斎藤人気を目の当たりにすれば、またどんなインチキをするか分からない。有名球団に入った某投手は、学生時代にソープランドの代金までその球団に面倒を見てもらっていた。そんな例がプロにはヤマほどある。
斎藤にはこの日、新たな勲章が加わった。1年生投手としては史上初となる春季リーグのベストナインに選出。無傷の4勝、リーグ3位の防御率1.65が評価され、「正直、ビックリしました。光栄です」と喜んだ。
夕方からの優勝パレードには、沿道に大勢のファンが集結。その後の祝勝会では「自分がいる4年間で再び早稲田黄金時代を切り開きたいと思います。我が早稲田野球部は一生勝ち続けます!」と絶叫した。ファン、学生にもみくちゃにされる斎藤を見て、笑いが止まらないのは東京六大学野球連盟だ。