前大阪府知事でタレントの
横山ノック(本名・山田勇)さんが3日午前7時過ぎ、いん頭がんのため兵庫県西宮市の病院で亡くなった。75歳だった。「
漫画トリオ」で一世を風靡(ふうび)し、参議院議員を経て大阪府知事にまで上り詰めたが強制
わいせつ罪で在宅起訴され、辞職。有罪判決を受け表舞台から退いた。しかし、舞台への情熱は失わず「テレビを見ながら、画面にツッコミを入れてます。(舞台に出られるなら)何でもさせてもらいます」と最後まで芸人としてこだわり続けていた。ただ、最近は病気に悩まされていた。
その風ぼうから“タコ”の愛称で関西を中心に幅広い人気を持った芸人が逝った。ひっそりと。それも突然に。
ノックさんの自宅近くの住民は「1カ月前に会ったときは元気だったのに」と涙ぐみ、芸人仲間も「半年前コーヒーをごちそうになった。元気そうだったのに」と肩を落とした。
ノックさんは“パンパカパーン!!今週のハイライト!!”のフレーズとニュースを題材にした斬新な漫才で人気を得た「
漫画トリオ」として活躍した。トリオのメンバーで芸能界を引退した上岡龍太郎(65)は、窓口となっている米朝事務所を通じ、コメントをしない意向を示した。
ノックさんは1968年に参議院議員に初当選。タレント議員の先駆けとなった。95年には抜群の知名度と、親しみやすいキャラクターで大阪府知事に初当選。
東京都知事に当選した故青島幸男氏とともに“無党派知事”として脚光を浴びた。2期目も235万票という過去最高得票で再選された。
しかし、2期目の選挙活動中に運動員の
女子大生に
わいせつ行為をしたとして99年12月に在宅起訴され、00年1月に知事を辞職。懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を受けて、表舞台から退いた。
辞任後は講演活動などを行いつつ、04年2月に大阪・ワッハホールで行われたベテラン漫才コンビ「秋田Aスケ・Bスケ」のイベントにゲスト出演し、舞台復帰。
昨年7月24日には、ラジオ関西「ラジ関アフタヌーン 立原啓裕です」でラジオ復帰を果たし「ホンマにうれしいです…」と涙で目を真っ赤にして声を詰まらせた。
人前で話すのが楽しくて仕方ないように「出演料なんていらんし、もっとしゃべってたかった。いつも家でテレビを見ながら『違うやろ!?』とか画面にツッコミを入れてます」と現役への強い情熱を見せていたが、この時点から体調には不安があった。
ラジオ出演日前に、高熱による脱水症状で約1週間入院。「タコでも、水が切れたら脱水症状になるんですわ」と芸人らしく笑いに転化したが、髪は一層薄くなり、顔のしわも増え、やつれた印象は否めなかった。
番組終了後の会見では「何でもやらせてもらいます。“ドジョウすくい”をやってといわれたら、一から勉強します。今後も、よろしくお願いします」。最後は新人のように深々と頭を下げて、会見場を後にした。再び舞台で華々しく活躍する願いがかなうことはなかった。
親族だけで密葬を執り行う。後日、お別れの会を開く。喪主は長男一貴(かずたか)氏