バーニングや
ジャニーズなど大手芸能プロダクションが幅を利かせ、彼らの内実に触れることすらタブーと化した芸能マスコミ。そんな芸能界の掟などどこ吹く風と、過激な描写を連ねたタレントたちの本を、当代きっての芸能本フリーク・吉田豪が選ぶ!!
ジャニーズ関連の事柄がスキャンダラスに描かれてる本といえば、
郷ひろみの『たったひとり』(小学館(80年)/780円)が素晴らしいですね。当時
郷ひろみは、やたらと脱ぎまくる、グラビアン魂オム(?SPA!)な感じの、2丁目的な意味でもスキャンダラスな写真集とかで無駄に男らしさを出していた時期なんですけど、
ジャニーズからバーニングに移籍した時の描写が生々しすぎるんですよ! 「事務所を移ったら、この世界からしめだして、仕事できなくするぞ」という声が周りから聞こえてくるって、ハッキリ書いてある。
ジャニーズ怖すぎですよ(笑)。それで、一時は自殺も考えたけど、結局「
ジャニーズ事務所とはかなりしんどいゴタゴタがあったけど、これもなんとか決着がついた」。一体どうやって決着をつけたのか知りたいところですけど、こういったことを大っぴらに書かせられるバーニングもすごすぎる。
ケンちゃんシリーズで一世を風靡した俳優の宮脇康之(現・宮脇健)さんの『ケンちゃんの101回信じてよかった』(講談社(04年)/1470円)も最高。宮脇さんは
ジャニーズ所属ではなかったんですけど、 この著書によると高校生の頃、どうやらジャニーさんに気に入られて、 ジャニーズの合宿所に通ってたらしいんです。そこでバンド組んだり、 マッチやヨッちゃんをパシリに使ってたり(笑)、エンジョイしてたんですけど、なぜかいきなり「ある出来事があって、荷物も何もかも置いて合宿所を抜け出した」って書いてあるんです。だけど次に続く記述で、「その理由はというと、それはいまだに話せない」(笑)。相手がジャニーさんだけに、「何があったんだ!?」って、想像をかき立てられますねえ。前に宮脇さんにインタビューした時、このこと突っ込んでみたんですけど、やっぱり「まだ話せない」って言ってました。ジャニーさん、恐るべし。
ジャニーズの暴露本は、このほかにも北公次さんの一連の本や、ジャニーさんとの生々しすぎる性描写が素晴らしい、木山将吾さんの『Smapへ――そして、すべてのジャニーズタレントへ』(鹿砦社(05年)/1200円)とか、結構数は多いんです。でも、事務所のことは批判しても、ジャニーさんのこと悪く書いてるものって、実はほとんどないんですよ。元ジャニーズの人をインタビューしてもそう。みんな悪く言わない。それは別に圧力うんぬんの話じゃなくて、ジャニーさん自身が悪い人じゃないからってことが、いろんな関連本を読み解いていくうちにわかってくるんです。例えば、元・光GENJIの諸星和己さんの名著『くそ長~いプロフィール』(主婦と生活社(04年)/1365円)を読むと、マネージャーを殴りまくったり、勝手に辞めようとしたりとか、 人気絶頂期で暴れん坊だった諸星さんをジャニーさんがフォローしまくってる姿がかわいそうで(笑)。ジャニーさんの人の良さと人間くささが垣間見える本ですね。
タレント本は
スクープの宝庫だ!
80年代のアイドルといえば、伊藤麻衣子(現・いとうまい子)さんの『夢の時間割』(学研(83年)/880円)もすごい。「どんなドラマでも主役って最初からだいたい事前に決まってるの。(略)その裏にはお金がからんでたり、プロダクションとテレビ局の関係とか、汚い部分がいっぱいある」ってハッキリ書いてある。この本、彼女の絶頂期に、それもあの「BOMB」(学研)から出た本ですよ。アイドルに関しても「だまされて泣いてる子、いっぱいいると思うよ。アッというまに脱がされちゃったりね」とか暴露しまくってて、事務所も版元も、これでよく許可したなっていう内容。あとすごいのが巻末ページ。「初潮 中1の4月2日」「メンスの周期 28日。安定しております」とか自分の生理すら赤裸々に暴露してるんですよ。
あと80年代アイドルでは、布川かおり(旧姓つちや。91年にシブがき隊の布川敏和と結婚)の『半径一マイルの専業主婦』(マイストロ(98年)/1200円)もかなり過激。 装丁がオシャレで、パッと見、普通の芸能人の主婦本に見えるんですけど、中身は延々と「毎日毎日朝帰り」だというフッくんの浮気の暴露が続くハードコア本! 主婦本でそんな家庭の事情を暴露して、どうするんだ! っていう気持ちになりますね。 「最初は『私の子育てについて』ということで書き始めたはずなのに、 最終的にはパパの話がいちばん多くなってしまいました。(略)浮気のくだりは嫌がるかなって思ったけど、『別に、本当のことだからいいよ』って、淡々と言ってました」という、 フッくんも了解済の一冊。
著書でカミングアウト!?
学会系芸能人の入会秘話
あと僕のライフワークとして前から続けてるのが、芸能人の(創価)学会関連の本の研究ですね。芸能界には、久本雅美さんをはじめ、有名な学会員の方がたくさんいますよね。そんな学会員同士の対談本とかも、 中身は延々と濃~い仏教の話しかしてなかったりで、すごくいいんですけど、やっぱり最高なのが、折伏(しゃくぶく・勧誘のこと)や入会・脱会話です。たとえば雪村いづみさんの『愛を謳う青いカナリア』(婦人画報社(87年)/1236円)と、 山本リンダさんの『どうにも止まらない私』(潮出版社(04年)/1238円)を併せて読んで、立体的に検証すると、雪村さんの入会時のすごいエピソードが浮かび上がってくるんですよ。
熱心な信者だったリンダさんのロス公演の楽屋に遊びにいった雪村さんが、リンダ母子と学会メンバーに折伏されるんですけど、リンダさんの本だと、「話はごく自然に仏法のことになりました。(略)やがていづみさんが『やってみるわ』と入会を決意してくれたとき(略)みなの頬には歓喜の涙があふれていたんです。(略)いつしかいづみさんの目も涙に濡れてました」って書かれてる。 でも雪村バージョンになると「楽屋の前に、リンダちゃんのお母さんとか、五十人ぐらいのメンバーがいて(略)私に一生けん命入信を勧めるんです。(略)五十対一ですからね、 勝ち目はなかったの。本当は嫌だったんですけど(略)苦肉の策で『わかりました。入信します』って言ってしまったんです」って、話が全然違うんですよ!
最後に紹介したいのが、小林亜星さんの『小林亜星のああせいこうせい』(立風書房(76年)560円)。赤線のことを書きまくった『軒行灯の女たち』(光文社文庫(85年)/357円)や、横尾忠則に無理やりサイケな表紙を作らせた『亜星流!』(朝日ソノラマ(96年)/1631円)とか、ほかの著作も大好きなんですけど、特にこの本は傑作。だって堂々と天皇批判まで繰り広げてる過激ぶりなんですよ。「どうして戦後の日本が、こうも無節操で、無道徳になってしまったかといえば、そりゃ天皇に原因があるんだ。(略)あれだけの戦争をしてたくさんの人を死なせて、『あっ、そう』ですむものか」。本当に過激すぎる。 亜星の亜は、まさにアナーキーの亜です!
タレント本って暴露目的でもなんでもなくて、こうやってポロッと無防備に、絶対に言っちゃいけないようなことが思いっきり書いてあったりするんです。そんなところを見つけることが僕にとって、タレント本の魅力なんですよね(談)。
ソース:
サイゾー