6人の死傷者を出した東京・渋谷の
シエスパ爆発。その余波がいま広がりを見せている。
サッポロビールは21日、翌22日開催予定の麻布十番温泉での記者会見を急きょ中止したのである。その理由が
シエスパ爆発だというから驚く。サッポロは事故とは無関係のハズだ。この会見では記事を書く上でより理解を深めてもらうという趣旨から、記者がまず風呂へ入り、その後ビールを飲むという粋な趣向。
「一言で言えばハッピーな話です。死傷者まで出した惨事の直後にこうした会見を行うことは不適切と判断しました」(サッポロ広報担当)
社会の常識に照らしたというわけだ。
ストレートに影響を懸念するのは、当然のことながらスパ業者。大型のスパ施設「ラクーア」を持つ東京ドームは“安全”であることを自社のHPとラクーア入り口の張り紙で掲示。巨大スパリゾートの常磐ハワイアンズは、渋谷のスパとは違って「硫黄泉」を使用し、施設より6キロ離れたところにある源泉から汲み上げていることなどを説明。利用客の確保に懸命だ。
すでにトバッチリを受けたところもある。スパ関連銘柄がそう。株価が総じて不調なのだ。証券幹部がこう明かす。
「男性にも人気のエステサロンチェーンのラ・パルレは
爆発事故が起きてから一段と売り込まれ、事故日から3日間で5.9%下落(15万2000円)。ボーリング機器大手の鉱研工業も温泉工事の減少を懸念されて3日間連続下げ。5.6%減(306円)です」
渋谷周辺の不動産価格の下落も気がかりだ。
「セレブな人たちの中には、ケチのついた松涛から麻布など他の高級住宅地へ移る考えを持つ人もいるようです。もし、事故の跡地に再びスパに類する施設が建つ計画が持ち上がれば、転居する人たちが間違いなく出ます。不動産価格はガタ落ちですよ」(地元の不動産業者)
実はこの懸念は現実のものとなっている。東急電鉄と東急不動産が組成し、渋谷区を含む都心5区のオフィスと商業施設に投資する「東急リアル・エステート投資法人」株価が21日、5.4%も下げたことがそう。「先行きを憂慮するムードが強まったため」と前出の証券幹部は説明する。
スパ
爆発の余波が大きくなるのはこれからだ。
さらにお役所は3人の死者まで出た大惨事だというのに、役所も運営会社も責任逃れ、責任のなすり合いだから、ひどいものだ。
都内での温泉掘削には、都の自然環境保全審議会の「許可」が必要だ。大学教授、都議など33人で構成されるが、審議会とは名ばかりらしい。
「審議会は02年10月、
シエスパの温泉掘削について『許可相当』と答申しましたが、官僚の一方的な説明を聞いて追認しただけです。当時の都健康局地域保健部長は『近隣の住民等に十分な事前説明を行うように指導している』と言っていましたが、近隣住民は建設に猛反対していた。一事が万事で、右から左で許可を出していたのです」(都庁関係者)
爆発した建物にはガス検知器がなく、開業後、一度もガス濃度を測定していなかったというが、
シエスパを運営していたユニマットビューティーアンドスパは「管理は業者に委託していた」。委託された日立ビルシステムは「契約の中にガス点検は入っていない」。下請けのサングーも「ガス濃度の点検は請け負っていない」と、みんな責任のなすり合い。
それでは監督官庁はどうか。厚労省は「労働安全衛生法は化学工場などを想定していてスパは管轄外」、環境省は「温泉法を所管しているだけで建物はウチではない」、国交省は「天然ガスに対する建物安全対策はありません」、経産省は「都市ガスなどのエネルギーは所管しているが、放出するガスは無関係」と、どこも知らんぷりだ。
役人たちも都内の温泉施設を利用していただろうに、「ここの所管はどこだろう」と思い至らなかったのか。
安倍首相は急きょ、法整備を検討するように指示したが、これでは犠牲者も遺族もやり切れまい。
ソース:
ライブドア