けいれん症の後遺症も伝えられる
北朝鮮の
金正日総書記(66)だが、重要式典さえ参加できないとなればもはや「生きながらに死んでいる」状態。これまでもアルツハイマーで重要決定ができず集団指導体制で政権を維持してきたとされるが、脳卒中発症後から政権内の抗争が激化。テポドン発射準備や核交渉決裂からみると軍強硬派に実権が移りつつあり、日本の安全にとり重大な危機が迫る。
「金総書記に代わって総書記の個人秘書室が緊急避難的に行政を切り盛りしてきたが、総書記が倒れ、政権のアキレス腱が露呈した」。こう語るのは北の内情に詳しい関西大の李英和教授だ。
原因は金総書記のアルツハイマー発症にあり、昨年9月、「行事には参加できるが、重要決定を下せる状況にない」との情報がもたらされたという。
金総書記の妹婿で2年前に復権し、影のナンバー2と目される張成沢党行政部長ら中国式の改革開放を目指す親族グループが秘書室を指導。金総書記の名のもとに日朝、米朝交渉を進めてきたとされるが、総書記が倒れたことで、このいびつな統治体制の限界が露呈したのだ。
米韓は金総書記が重病に陥った事実を早い段階でキャッチ。9日の建国60周年式典前には軍内部のクーデターを警戒し、頻繁に偵察機を飛ばすなど、韓国軍が厳戒態勢を敷いたという。
幸い軍部内の暴発は確認されなかったが、軍強硬派が発言力を増したことを裏付ける事実が金総書記が倒れたとみられる8月中旬以降、次々に表面化した。
8月26日には米国のテロ支援国家指定解除延期に反発し、寧辺の核施設無能力化作業の中断を発表。日本に対しても拉致問題の再調査委員会立ち上げ延期を通告。長距離弾道ミサイル「テポドン」の発射準備とみられる動きまで現れた。
李教授は「金総書記が倒れたことは秘書室体制が総書記の健康管理さえできなかったことを意味し、責任追及は免れない。行事も出席できなければ、生きながらに死んでいる状態で、変則的統治はもはや不可能」と指摘。
金正日政権始まって以来の危機だけに「勇ましい主張をする軍強硬派が実権を握る」とみる。
金総書記の息子の正男、正哲、正雲はいずれも後継者教育を経ておらず、すんなり3代目へ政権委譲される可能性が低いことは米中韓の専門機関の間で認識が一致している。軍を中心にした集団指導体制が強化され、表面的には平穏を保つだろうが、軍強硬派内部の主権争い激化は必至で、誰が実権を掌握するか予断を許さない状況だ。
朝鮮日報は12日付の社説で「北軍部は何としても核兵器を守ろうとする集団。ミサイル、化学・細菌兵器の統制が難しくなる」と予測。日本の安全保障にとって危機的要素が一気に高まていることだけは確かだ。
http://www.zakzak.co.jp/top/200809/t2008091232_all.html