07年
ミスユニバース世界大会で、
森理世さん(20)が優勝し、話題になっている。日本人としては48年ぶりの快挙。昨年も、
知花くらら(25)さんが2位となった。日本も世界が認める“美人”輩出国となったかの騒ぎだが、テレビなどを見て、「可愛いが、決して美人ではない」と思った方も多いだろう。果たして美人の世界基準は変わったのか。専門家らが徹底討論した。
【違和感】
「森さんは鼻がツンと上を向いている。日本人の(美人の)感覚とは違ってコケティッシュ系ですよね。化粧をすると、昨年の知花さんと変わらない。スポーツ紙が、韓国代表と間違えて写真を掲載するくらい見分けがつかなくなっている」
テレビや新聞で伝えられた森さんの顔を見て、漫画家のやくみつる氏は“美人ではない”と違和感を覚えた一人だ。
女性を美しくするプロのたかの友梨さんも、「顔立ちは際だってきれいというわけではない。おちょぼ口や色白など日本人の良さとは違って肌は白くない。(日本の美人というより)アジアンビューティー的ですね。日本人から見ると、アイシャドーはあんなに濃くなくてもいいのにと思う」と指摘する。
やく氏は、日本と外国の美の基準にも、「かなりズレがある。芸能人で、(森さんより)きれいな人はいると思う。昨年も思いましたが、バチバチの派手な顔より、愛嬌のある顔が外国に受けるのかな」と、大きな違いを感じている。
【選ばれたワケ】
たかのさんは、それでも「(森さんが)ノミネートされているのを見て、グランプリをとるなと思った」と予感した。
その理由は、「ミス日本やミス・インターナショナルは大和撫子、可愛さ、慎ましさなどが求められる。ミス・ユニバースは、ちょっと違いますよね。世界レベルでは、パフォーマンスの美しさなどが基準。森さんは日本人離れしていてパフォーマンスの動きが素晴らしい。日本人も“ここまでパフォーマンスができる”ことに世界も驚いたんでしょう」と話す。
4歳からダンスを学び
、現在はミス・インターナショナル静岡県準代業だった母親のダンススタジオでインストラクターを務める森さん。こうした素養も優勝に大きく寄与したのだろう。
ファッションデザイナーで、昨年のミス・ユニバース・ジャパンで審査員を務めたドン小西氏は、「顔はきれいというより中の下」としながらも、「コミュニケーション力や自分のアピール力などトータルで見て世界一になれた」という。
小西氏は、欧米勢の地盤沈下も森さんの勝因とし、「ドイツや米国などは食べ物や映画など同じ方向を向いている。外国人の参加者に個性がなくなってきた。その点、森さんはオリエンタルで個性が強い。最近の美人は、語学力や個性もないような“日本的”ではダメなんだ」と称賛する。
やく氏も森さんの顔は納得していないが、「6カ国語を操れるなど付加価値にウエートを置いているのかな」とみる。
また、たかのさんは、「女性は毎日、バイオリズムの変化で輝きが違う。彼女は、その日とっても輝く日だったのかも」と付け加えた。
【美の基準】
59年の大会で、優勝した児島明子さん。当時の印象について、たかのさんは、「ちっとも奇麗ではなかった。『嫁のもらい手があるのか』なんて声もあった。当時の個性では、異人種だった」とし、現在の美の基準には、「昔は背の高い女性は嫌われたけれど、今は全体の雰囲気で奇麗と思うことが多い」。
一方、著書に『美人コンテスト百年史』『美人研究―女にとって容貌とは何か』などがある国立国際日本文化研究センターの井上章一教授は、「森さんは48年前の児島さんと同じ路線だと思う。美の基準は変わってない」とみる。
ミス・ユニバースの選考基準は、決して美人というだけではなく、「受け答え、ステージ映えするか、度胸なども重要」とし、“美人の基準”には「目と鼻のバランスが整っているなど見た目が大きい。児島さんや、八頭身美人で有名な伊東絹子さんは今、うちの職場に来ても一番のべっぴんさんやと思う」と笑う。
そして、井上氏が「圧倒的に驚いた」のは児島さんがグランプリを獲得した時代で、「産経新聞は当時、1面から3面を使って記事を掲載した。今や予選をどこでやっているのかも知らない。美の基準が変わってきたというより、美人を扱う社会が冷淡になってきている」と話している。
【もり・りよ】86年12月24日、静岡市生まれ。175センチ。4歳から母親が経営するダンススタジオでダンスを始め、常葉学園高校を退学し、16歳でカナダのバレエ学校に留学。06年、ブロードウェーの舞台を目指すダンサーが通う学校でトレーニングを受け、帰国。中国、韓国、スペイン、フランス、アラビアなど6カ国語を話せる。
【ミス・ユニバース】 1952年、米カリフォルニア州のロングビーチで開催されたのが始まり。現在はニューヨークに本部を持つトランプ財団とNBCグループが共同主催。毎年、80カ国前後の国が参加(今年は77カ国)し、日本は52年から、代表を送り出している。
今年の日本代表は約4000人の応募者から、森さんが選ばれた。森さんら世界の代表は約1カ月前から、世界大会が開かれたメキシコ市入り、毎日の生活が審査の対象になる。世界大会では、「知性、カリスマ性、国際的な感覚、コミュニケーション力、グローバルな考え方などが重要」(大会事務局)。
ミスコンの世界大会としては、「ミス・インターナショナル」や「ミス・ワールド」も知られるが、ミス・ユニバースが知名度、権威とも一番高いとされる。
【日本代表のその後】 日本人として初めて入賞した伊東さんは164センチで頭が小さく、「八頭身美人」として話題となった。その後、女優に転身した。59年にグランプリを獲得した児島さんは、やはり女優となり、66年に俳優の宝田明さんと結婚し、二児をもうけたが、84年に離婚。歌手の児島未散は実子。萬田さんは女優、織作さんは写真家、小川さんはオペラ歌手、宮崎さんはファッションモデル、知花さんはタレントとして活躍中。
【歴代の主な日本代表】
53年 伊東 絹子(3位)
59年 児島 明子(グランプリ)
78年 萬田 久子
81年 織作 峰子
99年 小川 里美
03年 宮崎 京(5位)
06年
知花くらら(2位)
【歴代優勝者の出身国ランク】
(1)アメリカ 7人(54、56、60、
67、80、95、97)
(2)プエルトリコ5人(70、85、93、01、06)
(3)ベネズエラ 4人(79、81、86、96)
(4)スウェーデン3人(55、66、84)
(5)日本 2人(59、07)
(5)フィンランド2人(52、75)
(5)ブラジル 2人(63、68)
(5)タイ 2人(65、88)
(5)フィリピン 2人(69、73)
(5)豪州 2人(72、04)
(5)トリニダード・トバゴ2人(77、98)
(5)カナダ 2人(82、05)
(5)インド 2人(94、00)
以下1人
フランス(53)、ペルー(57)
コロンビア(58)、ドイツ(61)
アルゼンチン(62)、ギリシャ(64)
レバノン(71)、スペイン(74)
イスラエル(76)、南アフリカ共和国(78)
ニュージーランド(83)、チリ(87)
オランダ(89)、ノルウェー(90)
メキシコ(91)、ナミビア(92)
ボツワナ(99)、パナマ(02)
ドミニカ共和国(03)
※注・()内は開催年
ソース:
夕刊フジ